本研究は、在宅要介護高齢者を対象に、在宅ケアの実施に必要となる医療費と介護費用を把握することを目的とするものである。今年度は、某訪問看護ステーションの利用者(60名)を対象に、平成15年7月、8月、9月の3ヶ月間の医療費と介護費用を経時的に調査した。対象者の要介護度は、要介護度5が最も多く(16名、27%)、次いで要介護度1(15名、25%)、要介護度3(14名、23%)であった。 医療費(医療保険における診療報酬請求額)は3ヶ月間でやや減少傾向にあり、一人あたりの一ヶ月の医療費は7月約6万円、8月約5万6千円、そして9月は約5万3千円であった。一方の介護費用(介護保険における介護報酬請求額)は、3ヶ月間でほとんど変化がなく、一人あたりの一ヶ月の介護費用は約11万〜12万円であった。そして、医療費と介護費用とを合計した総費用も、3ヶ月間で大きな変化はなく、一人一月あたり、7月約20万円、8月約18万円、そして9月は約18万円であった。また、総費用に占める介護費用の平均割合は、7月68%、8月70%、9月69%と、ほとんど変化が認められなかった。さらに、介護保険支給限度基準額における使用割合は、7月45%、8月45%、9月41%と、これもほとんど変化が認められなかった。介護度と医療費、介護費用との関連をみると、介護度が高い者ほど介護費用が高くなる傾向が見られたが、介護度と介護保険支給限度基準額における使用割合との関係は認められなかった。 本研究の結果、今回調査した3ヶ月間では、医療費や介護費用の顕著な変化は認められなかったものの、在宅要介護高齢者の総費用(医療費+介護費用)における介護費用の占める割合が約70%を占めていることが明らかとなった。在宅要介護高齢者の医療・看護・介護ケアに費やされる費用を考慮する際に、介護費用が大きな割合を占めることを留意する必要があろう。
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