本研究は、耐糖能異常が及ぼすリスクの変化を考慮に入れて、およそ10年間の追跡データをもとに、その生命予後、並びに死因との関連を把握するものであった。対象となる地域は、大分県M保健所管内の7町村(人口5万4千人)であり、1987〜95年度における基本健康診査により、一次検査として尿糖陽性、自覚症状、随時血糖高値、既往歴、家族歴を基に選択されて75gぶどう糖負荷試験を受診した1647名を対象とした。 すでに、対象者の内の1577名から、初回OGTT受診時の検診成績を得ており、本研究では、その後、5年経過した時点での糖尿病治療状況、体重、喫煙血圧、血清総コレステロールの変化を観察すること、さらに対象者全員について2001年12月末までの予後、並びに死因の把握が主たる目的であった。 本年度は、当域の保健所の協力を得て、各町村への予後の調査と体重等の検診データの追跡の依頼を行い資料の収集を行った。また、すでに、対象となる7町村のうち6町村について予後の把握を行うことができ、現時点で184名の死亡を確認した。さらに、本年度は死因についての検討を行うため、厚生労働省に対して人口動態磁気テープの目的外使用の申請の手続きを行った。 これまでの検討から、本研究コホートの耐糖能異常群は、肥満者よりもむしろ痩せの者において生命予後に対するリスクが増加した。また、従来の報告の通り、耐糖能異常群では正常群に比べると冠危険因子のハイリスク者の割合は高かった。耐糖能異常者における冠危険因子と生命予後との関連は、単独の要因のみではリスクの増加は認めなかったが、因子の集積によりベースに耐糖能異常がある場合には、生命予後が悪化することが示唆された。
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