研究概要 |
1.背景:本研究は,近未来に脳梗塞を発症し得る患者を抽出する検診法を確立するためのものである.経頭蓋超音波ドプラ装置により得られる微小栓子信号は,その検出数が,脳梗塞患者で多く,再発予防投薬により減少するとされ,脳血管内に飛来する微小栓子に由来し脳梗塞発症の危険性を意味すると考えられておる.しかし,頭蓋骨による超音波ビーム減衰率が微小栓子信号出現頻度や信号強度の個体差に反映されることが問題であり,脳梗塞発症の予測に応用するには,この点を解決する必要がある. 2.本年度の目的:頭蓋骨による超音波ビームの減衰率と検出される微小栓子信号強度の関係を検討した. 3.方法:循環系モデル・頭蓋骨モデル・血栓栓子モデルの作成を行った.循環系モデルの作成には,体外循環用循環ポンプのセットを用いた.頭蓋骨モデルは,サル頭蓋骨の切片より作成した.血栓栓子モデルは,ブタ血液をトロンビン溶液に滴下して作成した.経頭蓋超音波ドプラ装置は,WAKI Atys Medical 1-TCを用いた.検出されたアナログ音データを,コンピュータソフトDASY Labを用いて研究代表者自身が構築した計測ソフトに取り込んだ.頭蓋骨による超音波ビームの減衰率と検出される微小栓子信号強度の関係を検討した.頭蓋骨による超音波ビームの減衰率は,超音波出力に対して検出される血流バックグラウンド音圧として求めた. 4.結果:検出された微小栓子信号の強度は,頭蓋骨モデルによる超音波ビーム減衰率に対し,1次関数的に減弱するという関係が認められた. 5.平成14年度の計画:今回得られた知見である微小栓子信号強度と頭蓋骨による超音波ビーム減衰率の関係を,脳梗塞患者および健常者から得られたデータに適用し,得られる微小栓子信号数や微小栓子信号強度のデータが正規分布し,且つ両者の間で統計学的に有意差を認め得るかどうかにつき検討を行う.得られた諸結果を,学会発表並びに原著論文として公表する.
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