研究概要 |
【背景】平成13年度までに,申請者は,weak-HITSの信号強度の側頭骨による減衰率が,バックグラウンドのソナグラム信号音の減衰率に比例するという結果を実験的に導いた.更に,申請者は,バックグラウンドソナグラム信号音強度は,血管径の2乗に比例するという結果を導いた.この事実は,weak-HITS検出数の個体差が,側頭骨による信号強度の減衰ではなく,血管径の個体差を反映すことを意味するものと考えられた.申請者は,このことを踏まえ,平成14年度に,被験者データの取得,解析を行った. 【方法】脳梗塞のリスクを持たない一般健常被験者10名を募集した.先ず,weak-HITSの検出を行うサンプルポイントの血管径を,径頭蓋ドプラBモード法で測定した.次に,同部位に於いて,weak-HITSの検出を行った.検出は,プローブを頭部に固定し,経皮・経側頭骨的に同側の中大脳動脈に超音波ビームを当てて各々5分間ずつ検出した.これを左右両側で行い,その検出数の左右の平均値を,上記【背景】に述べた平成13年度に得られた法則に基づき補正し,データが正規分布するかどうか検討した.更に,高血圧,糖尿病,心弁膜症や心房細動等の心疾患,頸動脈狭窄病変を指摘された脳梗塞のリスクを持つ患者のうち,予防的投薬を受けていない被験者計10名を募集し,同様の検討を行い,各々の分布の比較を行った. 【結果と考察】健常者群の検出数データは,正規分布した.脳梗塞リスクファクター群のデータは正規分布しなかったが,健常者群よりも有意に多く,内訳を見ると,頚動脈狭窄病変,心疾患その他のリスクを持つ者の順に,検出数が多い傾向を認めた.今回開発したシステムは,将来的に脳梗塞発症の予測に有用となる可能性がある.今後,例数を重ねることにより,リスクファクター別,つまり発症する梗塞のタイプ別の予測が可能になる可能性があるものと思われる. (計797字)
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