我々は、1958年より40年以上に亘り世界7ヵ国共同研究の一環として、福岡県田主丸町において経年的に一般住民検診を行ってきた。そして、他の欧米諸国に比し、我が国は虚血性心疾患が少なく脳卒中が多いこと、その最大の危険因子は高血圧であることを明らかにした。近年、動脈硬化性病変を評価する補助的手段として、非侵襲的で繰り返し観察が可能な高解像度頚動脈超音波断層検査が盛んに行なわれている。我々は、平成11年に同地区において約2000人を対象とした住民検診を行い、受診者全員に同検査を施行した。その結果、高血圧を始めとした古典的な冠危険因子が重積すると、頚動脈内膜中膜厚の肥厚度が増し、頚動脈プラークが存在する頻度が有意に増加することが明らかとなった。これは、本邦における一般住民検診での初めての報告であるが、これまでに、古典的な冠危険因子の重積と前述した頚動脈エコー所見に関する明らかな前向き疫学調査の報告は無く、また古典的な冠危険因子の重積と脳血管病発症との関連性を確認した大規模な縦断調査も報告されていない。 そこで我々は、平成11年に行った一般住民検診受診者の頚動脈エコー所見を基礎データとして、長期的な前向き調査を行い、冠危険因子の重積と頚動脈硬化の進展度との関連性、及び心・脳血管病発症との関連性を確認することとした。現在、同地区において再度住民検診を行い、頚動脈超音波断層検査において、頚動脈内膜中膜厚の測定、及び頚動脈プラークの有無を確認する準備を進めている。今後は、前回(1999年)測定した頚動脈内膜中膜厚や頚動脈プラークと今回の測定結果を比較し、その進展度を確認することにより、古典的な冠危険因子の重積と頚動脈硬化の進展度との関連性を検討し、心・脳血管病発症との関連性も併せて検討する予定である。
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