研究概要 |
本研究は昭和33年より福岡県浮羽郡田主丸町に於いて、世界7カ国共同研究の一貫として行われている循環器疫学研究であり、今回、我々は同一地区にて40歳以上の男女、約2000人を対象とした大規模な住民検診を行い、全員に頚動脈エコーを施行し頚動脈の内膜・中膜厚および頚動脈プラークの有無を計測した。また、同時にfood frequency法による詳しい食事摂取調査を行った。これまでの検診では前日の食事を記入してもらう24時間思い出し法を用いてきたが、普遍性に乏しく、客観的な個々の栄養摂取量を反映しない可能性があるため、l05項目の詳しい食品頻度調査を行った。 本邦では頚動脈エコーを一般住民検診に於いて施行することは稀であり、日常の食生活で摂取する栄養素と頚動脈エコー所見との関連を調べた研究は未だ行われていないため、その成果は極めて興味深いものである。以下にこれまでにわかった結果を報告する。 調査結果を分析すると、n-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が頚動脈の内膜・中膜厚および頚動脈プラークと負に関連し、これらの栄養素が抗動脈硬化作用を有する可能性が示唆された。即ち、EPA, DHAの摂取量が少ない人ほど、頚動脈の内膜・中膜厚が厚く、頚動脈プラークを有する頻度も高いという結果であった。さらに、抗酸化ビタミンであるビタミンCの摂取に於いても同様な関連を有することが示されたが、ビタミンEに関しては有意な関連は認めなかった。 本研究は平成14年度も継続し、今後さらに症例数を増やすとともに詳しい分析を行い、最終的な報告を行う予定である。
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