骨指標と女性ホルモン、骨代謝マーカーの関係および、血清脂質、インスリンと女性ホルモンの関係を縦断的に検討した。対象者は、3カ月以上基礎体温を記録し、卵胞期と黄体期に採血を行い、1年後の追跡調査に参加した女子学生62名である。卵胞期と黄体期の採血は基礎体温を観察しながら行った。 62名中、無月経の者は5名、月経はあるが3周期とも排卵していない者(3周期無排卵群)は13名、3周期中1〜2周期排卵しているもの(1〜2周期排卵群)は13名、3周期とも排卵しているもの(3周期排卵群)は31名であった。1〜2周期排卵群は毎回の排卵の状況が不安定であるため対象から除外し、無月経群、3周期無排卵群、3周期排卵群の計49名で検討を行った。 3群間の音響的骨評価値(OSI)、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、LDLコレステロールの1年間の変化量をそれぞれのベースラインの値を補正して比較したところ、総コレステロールに有意な差が認められ(無月経群で+25.8±7.7、3周期無排卵群で-1.0±4.7、3周期排卵群で-1.4±3.0、p=0.007)。 1年間のOSIの変化を説明する因子を探し出すため、ステップワイズ回帰分析を行った。従属変数を一年間のOSI変化量、独立変数の候補をベースラインのOSI、ベースラインの体重、一年間の体重変化量、卵胞期のエストロゲン(E2)、プロゲステロン(P)、黄体期のE2、P、ベースラインの血中アルカリフォスファターゼ濃度、尿中デオキシピリジノリン濃度とした。OSIの変化量はベースラインのOSIと負に(p<0.001)、ベースラインのデオキシピリジノリンと負に(p=0.044)有意な関係を示した。つまり、デオキシピリジノリンが高い人は一年間のOSIがより減少していることが示された。デオキシピリジノリンは骨吸収マーカーであるので、骨吸収が盛んなほどOSIが減少することが示唆された。 加えて、血清脂質、インスリンの一年間の変化量と女性ホルモンの関連をステップワイズ回帰分析で検討した。従属変数を一年間の脂質変化量、インスリン変化量、独立変数の候補を、それぞれのベースラインの値、ベースラインのBMI、一年間の体重変化量、卵胞期のエストロゲン(E2)、プロゲステロン(P)、黄体期のE2、Pとした。その結果、総コレステロール、LDLコレステロールと卵胞期のエストロゲン濃度の間に有意な負の関連が認められた。すなわち、卵胞期のエストロゲン濃度が高い人ほど、一年間で総コレステロール濃度、LDLコレステロール濃度が減少することが示された。 本研究により、骨吸収マーカーであるデオキシピリジノリンが一年間の骨指標変化を予測する因子であることが明らかになった。加えて、総コレステロール濃度、LDLコレステロール濃度の変化には生理学的なエストロゲン濃度の違いが重要な意味を持つことが示された。
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