昨年度に引き続き、開胸下にラット冠動脈を結紮することで虚血による心筋梗塞モデルを作成した。本年度は主に、ドパミン系関連遺伝子のCOMT及びMAOのmRNA発現量について、定量的RT-PCR法を用いて測定した。まず、組織化学的にTUNEL陽性細胞を確認した後、常法に従い心臓及び血液からCOMT及びMAOのmRNAを抽出した。定量的RT-PCRの結果、虚血30分及び60分の段階では、COMT及びMAOのmRNA発現量に殆ど変化は認められず、その後の再灌流によっても、殆ど経時的変化は認められなかった。このことから、もともと心臓に発現するCOMT及びMAO量が少ないことも影響しているが、この両者が虚血誘導性アポトーシスには関与していないことが考えられる。一方、血液中にCOMT及びMAOのmRNAは検出できなかった。よって昨年度得られた結果をふまえると、冠動脈血リンパ球より採取したBcl-2mRNA量が、虚血時から。再灌流時にかけて減少傾向を示したことから、リンパ球由来Bcl-2mRNAは、心臓性突然死の血液生化学的診断マーカーとして応用できる可能性がある。しかしながら、ヒト心臓性突然死例における血液の場合、死後変化等の影響を非常に受けやすく、mRNAが分解される前に血液採取を行う必要がある。今後は、ヒト心臓性突然死例における血液を可及的速やかに採取し、実際に応用可能か否かを検討していく予定である。
|