研究概要 |
剖検時にヒト腹部大動脈より、正常または粥状硬化病変を有する血管壁を採取した。これを細切しホモジナイズした後、Folch法により粗脂質を抽出した。さらに固相抽出法を用いてコレステロール画分を精製分取した。 このコレステロール画分を液体クロマトグラフ-マススペクトル(LC-MS)法にて分析した。カラムはODS(4.6×250mm,2.5μm)を用い、イオン化は大気圧イオン化法(正イオンモード)にて行った。移動相には10mM酢酸アンモニウム添加メタノールを流速0.7ml/minで用いた。その結果、粥状硬化病変からはコレステロール酸化物である7-ketocholesterol,7-hydroxycholesterol,過酸化物である7-hydroperoxycholesterolが検出された。ただし、7-hydroxycholesterolと7-hydroperoxycholesterolの分離は不完全であり、両者の混合物としてのピークを得るにとどまった。 化学発光-高速液体クロマトグラフ(CL-HPLC)法にてコレステロール過酸化物を分析したところ、粥状硬化病変(n=8)からは7-hydroperoxycholesterolの2種の異性体(7α-hydroperoxycholesterol,7β-hydroperoxycholesterol)が検出された。しかし、5α-hydroperoxycholesterolは検出されなかった。β-sitosterol 5α-hydroperoxideを内部標準物質として定量した結果、7α-hydroperoxycholesterolは2.6±0.8nmol/g、7β-hydroperoxycholesterolは5.3±2.6nmol/gであった。一方、正常血管壁(n=5)からはいずれのコレステロール過酸化物も検出されなかった。 次年度は、紫外部吸収-高速液体クロマトグラフ(UV-HPLC)法にて7-ketocholesterol,7-hydroxycholesterolの定量分析を行うことを目標とする。
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