研究概要 |
分析試料中の微量毒素を抽出し、蛍光誘導体へと変換した後、高速液体クロマトグラフ-蛍光検出器で検出する方法について検討した。毒素の抽出・蛍光誘導体への変換は、固相マイクロ抽出法を利用した。 1)蛍光誘導化剤の検討 シアノバクテリア毒素の一つであるアナトキシンをモデル化合物として蛍光誘導化剤の検討を行った結果、4-fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole(NBD-F)が、反応時間が短く、副反応が少ない誘導化剤として適していた。 2)SPMEの抽出相上での誘導体化の検討 水にアナトキシンを添加した試料を用いて、SPMEの抽出相への抽出条件、NBD-Fでの誘導体化条件を検討した。その結果、抽出相を分析試料に30分間浸漬し、NBD-F溶液を滴下・加熱することで抽出相上での誘導体化が可能となった。また、NBD-F溶液は、マイクロシリンジを用いて滴下する方法に加え、スプレーで吹き付ける方法も有効であることか明らかとなった。 3)シアノバクテリア毒素の分析法の検討 最適条件下で検量線を作成した結果、50-1,500ng/mlの範囲において良好な直線性が得られ、検出下限は、20ng/mlであった。日内変動は、8%以内と再現性のよいものであった。 4)トリカブト毒素の分析法の検討 トリカブト毒素の蛍光誘導体化を検討したが、今回検討した限りにおいては、誘導化できなかった。そこで、紫外可視検出器を使用して、SPMEの抽出相への抽出を検討した結果、抽出相を分析試料に30分間浸漬することで抽出が可能となった。本法を、トリカブト植物体からの毒素の抽出に応用したところ、分析可能となった。本法は、トリカブト植物体からの簡便、迅速な毒素成分の分析に有効である。
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