研究概要 |
関節リウマチ(RA)線維芽細胞様滑膜細胞(fibroblast-like synovitocyte(FLS))は、RA滑膜で増殖し、炎症性サイトカイン・ケモカインを産生している。各種ケモカインによりRA FLSを刺激し、サイトカイン産生の変化を解析した。これまでにRA滑膜での産生が報告されているMCP-1,RANTES,SDF-1のレセプターである、CCR2、CCR5、CXCR4の発現を確認した。MCP-1,RANTES,SDF-1でRA FLSを刺激したところ、MCP-1は濃度依存的にIL-6,IL-8の産生を亢進させた。RANTES,SDF-1はMCP-1と比較すると程度は小さいが、ともにIL-6,IL-8の産生を亢進させた。これらの結果より、RA滑膜組織で発現されているケモカインは、炎症局所への炎症細胞浸潤に関与しているだけではなく、RA FLSを刺激しサイトカイン、ケモカインの産生亢進にも寄与していると考えられた。 RA滑膜組織へのT細胞浸潤におけるケモカインの役割を解析するため、fractalkine(FKN)、およびそのレセプターCX3CR1の発現を解析した。RA患者では、末梢血CD4,CD8 T細胞上のCX3CR1の発現頻度が健常者よりも上昇していた。また、末梢血CX3CR1陽性T細胞では、CX3CR1陰性T細胞と比較し、IFN-γ,TNF-αの発現頻度が上昇し、また細胞障害性分子(granzyme A,perforin)の発現がみられた。RA滑膜組織において、血管内皮細胞、および線維芽細胞様滑膜細胞よりFKNが産生され、血管周囲のT細胞においてCX3CR1の発現がみられた。可溶性FKNは末梢T細胞の遊走を誘導し、また膜型FKNは、RANTESによる末梢T細胞遊走を促進した。これらの結果より、末梢血CX3CR1陽性T細胞は、type 1型のサイトカイン、細胞障害性分子を発現する特異な細胞であり、そのCX3CR1陽性T細胞はFKNによりRA滑膜組織に浸潤し、RAの病態形成に深く関与していると考えられた。
|