ベーチェット病は口腔潰瘍、外陰部潰瘍、眼・皮膚症状を主徴とした全身性炎症性疾患であるが、その病態はいまだ明らかでない。ベーチェット病と関連する遺伝素因としてHLA-B51とMICA*009(MICA膜貫通部分のマイクロサテライト領域のA6配列)が報告されているが、これらがベーチェット病の病態に関わる機序はいまだ明らかではない。昨年度の本研究テーマでMICA-A6部分ペプチドを認識するT細胞がB51陽性ベーチェット病患者の疾患活動期に検出されることを報告した。そこで、本年度はMICA-A6反応性T細胞株のHLA拘束性と細胞傷害活性について検討した。B51陽性のベーチェット病患者末梢血T細胞を自己抗原提示細胞とIL-2存在下でA6ペプチドにより反復刺激し、MICA-A6反応性T細胞株を樹立した。これらT細胞株はA6ペプチドをパルスしたB51遺伝子導入B細胞株あるいはペプチドなしのB51とMICA*009の両遺伝子を導入したB細胞株を認識し、この反応は抗HLAクラス1抗体により完全に抑制された。さらに、MICA-A6反応性丁T細胞株はA6ペプチド存在下でB51陽性細胞を傷害した。MICA分子の発現は上皮細胞、血管内皮細胞、ケラチノサイトなどに限られ、ベーチェット病にみられる病変分布と一致する。したがって、MICAに対する自己反応性T細胞はB51拘束性にMICAの多型性領域を認識し、MICAを発現する上皮や血管内皮細胞を傷害することでベーチェット病の炎症性病態に関与する可能性が示された。
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