マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、活性化リンパ球より分泌され、マクロファージに作用して免疫応答を誘導するリンホカインとして考えられてきたが、近年、免疫系のみならず、内分泌系、細胞の分化増殖など、非常に多様な機能を持つことが報告され注目を集めている。しかしながら、MIFの作用機序、生体内における生理的役割についてはいまだ不明な点が多い。MIFはグルココルチコイドの作用を制御する働きがあることから、免疫系に直接作用するだけで無く、炎症抑制効果を持つグルココルチコイドの作用を阻害することによって免疫病の発症に関与していることが予想された。 これまでの我々の研究から、スーパー抗原投与時の敗血症ショック誘導時に血中のMIF濃度ならびにコルチコステロン濃度が上昇することを明らかにしている。さらに最近抗MIF抗体の投与により血中のコルチコステロン濃度が顕著に上昇することを見い出した。このことはMIFがグルココルチコイドの作用を阻害するだけでなく、その分泌も制御している可能性を示唆している。 今年度はさらにMIF遺伝子ノックアウト(KO)マウスを用いた研究に着手し、抗MIF抗体投与で見られたような血中グルココルチコイドの有意な上昇は見られなかった。これは、KOマウスのように最初からMIFが無い状態ではグルココルチコイド自体のフィードバック阻害などの働きにより、血中のグルココルチコイド濃度が一定に保たれてしまうことが原因と考えられた。 さらにMIFKOマウスを用いた解析から、MIFKOマウスはT細胞依存的肝炎に高感受性であることが示唆されるデータが得られている。詳細は現在解析中であるが、MIFKOマウスの肝細胞ではアポトーシスが亢進されており、肝臓におけるサイトカイン産生パターンの違いがこの差に関与しているのでは無いかと考えている。
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