研究概要 |
我々はヒト関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスおよびそのFas依存性制御機構について検討するため、申請時の研究実施計画に従い、以下の実験を行った。 1.慢性関節リウマチ、変形性関節症、および外傷骨折後の患者より文書による同意を得た後、手術検体として膝・股関節等より関節軟骨組織を採取した。これら軟骨より軟骨細胞を分離し、単層培養系を確立した。 2.分離培養後の軟骨細胞にFas関連分子が発現しているか否かにつき、RT-PCR, limmunoblotting、およびflow cytometry等により検討した。この結果、軟骨細胞にはFas, Bc1-2, Bax, caspase-8, caspase-9の発現が確認された。さらに、Fas依存性アポトーシスに対し抵抗性を付与する分子であるFas-associated death domain-like interleukin-1beta-converting enzyme (FLICE) inhibitory protein (FLIP)が軟骨細胞に発現していることを初めて明らかにした。 2.培養ヒト関節軟骨細胞に、試験管内でアポトーシス誘導性抗Fas抗体(CH11/7C11)により18時間から24時間の架橋刺激を行い、これによりアポトーシスが誘導されるか否かにつきDNA ladder assay, Hoechst蛍光染色,flow cytometry等につき検討し、その頻度を解析した。この結果、軟骨細胞には高頻度でFasが発現しているにもかかわらず、抗Fas抗体刺激に対しては抵抗性であることが確認された。その一因として、抗Fas抗体刺激後のcaspase-8の活性化が感受性細胞と比較して不十分であることが考えられた。
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