高濃度CCK刺激ラット膵腺房細胞初代培養系(実験的急性膵炎モデル)を用いて、培養液中へのタンパク分解酵素阻害剤添加(gabexate mesilate、nafamostat mesilate、Pefabloc)による膵腺房細胞内トリプシン活性阻害効果、膵腺房細胞内NF-κB活性化阻害効果を検討した。 100nMCCK刺激によって、IκBキナーゼの活性化、IκBαの分解、NF-κBの活性化、膵腺房細胞内トリプシン活性化が生じた。 Nafamostat mesilate、Pefablocは用量依存性にNF-κB活性化とトリプシン活性を阻害した。一方、gabexate mesilateはトリプシン活性を用量依存性に阻害したが、NF-κB活性化の阻害には用量依存性を認めなかった。Gabexate mesilateとプロテアゾームインヒビター(E64d)を同時に添加したところ、gabexate mesilate単独でのトリプシン活性阻害効果に変化を与えず、NF-κB活性化が阻害された。すべてのタンパク分解酵素阻害剤添加でCCK刺激によるIκBキナーゼの活性化が阻害された。しかし、gabexate mesilateではIκBの分解は阻害されなかった。 以上より、高濃度CCKによって生じる腺房細胞内でのトリプシン活性化はIκBキナーゼの活性化を生じさせることによって、NF-κBの活性化を起こしていることが示唆された。Nafamostat mesilateとgabexate mesilateは膵酵素阻害剤として、ともに急性膵炎の治療に使用されているが、腺房細胞においてgabexate mesilateはNF-κBの活性化に影響を及ぼさず、nafamostat mesilateはNF-κBの活性化を抑制するという相違があることが明らかになった。この相違はNF-κB活性化の細胞内情報伝達経路において、IκBキナーゼ活性化以降(文献的にはIκBのリン酸化、ユビキチン化、プロテアゾームによる分解)に対する作用の違いであることが示唆された。
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