研究概要 |
本年度は、重症急性膵炎における敗血症発症の病態と腸管変化の関連を解析することを目的に、重症急性膵炎モデルとして確立されているラットタウロコール酸膵炎モデルを用い、膵炎誘導後の腸管粘膜バリア機構の機能的形態的変化、生存率について評価したその結果、本モデルは、膵炎発症48時間後の生存率が33%、96時間後の生存率が12%の致死性膵炎であり、急性膵炎発症後に経時的に腸管湿重量の増加と腸管透過性の亢進が誘導されることが明らかになった。腸管の組織学的変化について、4%パラホルムアルデヒド固定、HE染色下に観察すると、粘膜厚とCrypt深には変化は認めなかったが、粘膜内への炎症細胞浸潤、腸管内腔側への上皮の脱落、Villus高の低下が観察された。これらの変化は、十二指腸、空腸で強く、回腸、大腸では比較的軽度であった。全血、ならびに摘出ホモジネートした膵臓、肝臓、脾臓、腸管リンパ節を検体とし、Blood agar plate, anaerobic agar plate 37℃にて培養し、大腸菌感染を検討すると、いずれも膵炎発症72時間、以降に感染が明らかになった。 腸管粘膜の恒常性維持に重要な役割を担っていることが明らかにされているGlucagon like peptide-2(GLP-2)の受容体発現を免疫染色法により検討すると、正常ラットの小腸大腸に広く発現が観察されるばかりでなく、膵炎ラットの腸管にも発現が観察された。従って、GLP-2投与は、腸管に対して高い選択性をもって作用し、重症急性膵炎における腸管バリア機構を改善増強し、Bacterial translocationを介した敗血症の発症を抑制しうる可能性が示唆された。
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