研究概要 |
本研究では、臨床材料の収集が必要不可欠であるが、生検肝組織の収集状況に関しては、C型肝炎例へのリバビリンの使用が昨年末に保険で認められたことが影響し、同時期からC型肝炎加療目的に当科に入院する症例が増加したことから、比較的順調に進んでいると言える。RNAの検討に供するために、生検肝組織はOCTコンパウンドに包埋して保存しているが、2002年3月の段階での総標本数はのべ30個となった。このうち組織学的進展度の分類ではF1, 2, 3, 4がそれぞれ7, 8, 8, 7例であり、肝病変の進展と、C型肝炎ウイルスの分布や量あるいは各種サイトカインの分布や量との関連性を検討することが可能と考えている。 一方、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis, PBC)の検討では、さまざまなレベルでの胆管で研究を行う必要があり、それに見合うだけの標本の収集の継続が必要である。 マイクロダイセクションは、Laser Microdissection model CRI337(Cell Robotis社製)を用いて目標の細胞を切り出している。RNAの抽出は、今年度、技術的な改善も含む各種検討により、さらに効率よく得られるようになった。12μmのスライス厚で、肝細胞を100個切り出して得られたRNA抽出液から・Raji細胞の総RNA量200-1000pgに含まれるのと同量のGAPDHが得られるようになった。また、小葉間胆管に関してもGAPDHを検出することが可能となった。 このようにして得られた微量のRNAの定量はリアルタイムPCRを用いて行う。すでに可能であったHCV-RNAやGAPDHに加えて、独自に設定したプライマーを用いてPKRが測定可能となり、今後は、インターフェロンαや2, 5-ASなどの測定条件も検討中である。 来年度は、保存した標本を用いて、今年度得られたマイクロダイセクションの技術やRNA抽出技術、各種サイトカインの測定法などを駆使して、当初の目的である、病態によるC型肝炎ウイルスの組織内感染様式の相違・胆管障害と肝炎ウイルスの関連性の有無、などを明らかにしていく予定である。
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