研究概要 |
慢性肝炎から肝癌を発症するB型肝炎ウイルストランスジェニックマウスモデルにおいて、病態の進展に関与するウイルス抗原特異的CD8陽性Tリンパ球の免疫学的作用機序を解析するとともに、そのエフェクター分子であるFasリガンド(FasL)に対する中和抗体を投与して治療効果を観察した。 1.CD8陽性Tリンパ球の免疫学的作用機序:CD4, CD8陽性Tリンパ球およびBリンパ球分画に分けてそれぞれの作用を比較解析することにより、主にCD8陽性Tリンパ球が肝細胞内のカスペース・カスケードを活性化させて肝細胞核を断片化し、肝細胞死を誘導していることが示された。さらに肝細胞死の程度と肝炎の重症度は相関しており、CD8陽性Tリンパ球が直接慢性肝炎の発症に関与することが明らかになった。 FasL中和抗体による治療効果:CD8陽性Tリンパ球の細胞死誘導分子FasLの中和抗体を投与することによって、肝炎の重症度がトランスアミナーゼ値にて1/3に軽減することが示された。 これより、CD8陽性Tリンパ球がFasLを介する肝細胞死の経路を活性化することによって慢性肝炎を誘導していることが明らかになった。平成14年度は、慢性肝炎から肝発癌の過程におけるFasLを介する経路の影響が明らかになるものと予想される。
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