研究概要 |
平成13年度までの研究にてGreen Fluorescent Protein (GFP)トランスジェニックマウスを用い骨髄細胞からの肝細胞への分化増殖のin vivo評価モデルを世界に先駆け開発した(GFP/CCl4モデル)。このモデルにおいては,持続的な四塩化炭素(CCl4)投与による肝障害時に,骨髄細胞から肝細胞への分化・増殖が確認され,骨髄細胞投与後,肝臓内の骨髄細胞は25%まで増加し,肝細胞索構造を構築した(特願2001-271240号)。この研究成果については2年1回開かれる2002 FASEB Summer Research Conference"Mechanism of liver growth, differentiation and molecular pathogenesis of hepatic diseaseにて招待講演を行った。さらにこのモデルの解析の結果、骨髄細胞投与により、血清アルブミン値の回復、生存率も有意に骨髄細胞の非投与群に比べ有意差を持って改善していた。最近問題になっている、この分化転換において細胞融合の関与は少ないと考えられた。また肝線維化も有意に改善していた(この結果については2002年度アメリカ肝臓病学会総会プレナリーセッション口頭発表)。これらの結果より考え、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法は臨床応用可能な次世代の移植医療になりえると考えられた。さらに東京大学薬学系研究科生理化学教室の仁科博史博士との共同研究にて、胎児肝特異的な分子マーカーを単離する目的で、胎生期11.5日(E11.5)のマウス肝を抗原にして複数のモノクローナル抗体を作製して解析してきた。このうち抗Liv2と命名した抗体は、マウス発生期に出現する肝幹細胞である肝芽細胞を特異的に認識する。このLiv2陽性細胞は骨髄差wartの肝細胞への分化過程にて出現する。また抗Liv2抗体作成時、同時に作成した抗Liv8抗体は、大動脈・生殖隆起・中腎(AGM)領域の血管内皮細胞や胎児肝領域に流入する血液幹細胞に加え、成体骨髄中の細胞も認識することから、胎児肝における二次(成体型)造血や成体の造血の場である骨髄を解析する有用なツールになることが期待されている(第25回日本分生物学会ワークショップにて口頭発表)。我々は骨髄中に存在する肝幹細胞の同定のため、あらたに作成したLiv8抗体を解析した。この結果Liv8陽性、陰性細胞の移植では、陰性群において高率に肝細胞への分化転換が確認でき、この結果より骨髄中のLiv8陰性細胞群が再生療法に有用な細胞群と考えられた。
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