本研究では種々のストレス刺激やすサイトカイン刺激に応答して免疫担当細胞から炎症性サイトカインを産生する細胞内シグナル伝達系のMAPキナーゼカスケード(p38、JNK)に着目し、慢性炎症性腸疾患の炎症部粘膜組織におけるMAPキナーゼカスケードの活性化のメカニズムおよびその活性化を阻害することによる粘膜局所における炎症進展の抑制効果を検討することを目的とした。 本年度においてはTh1優位の慢性腸炎を安定して発症するCD45RBhiトランスファーモデルを用いて以下の実験を行った。 1.p38阻害薬皮下注群、p38阻害薬経口投与群、コントロール(未治療)群の3群に分け、下痢、下血の有無、体重の変動、死亡率を観察する。T細胞移植後6週目にマウスを屠殺し、腸管の炎症の評価および免疫担当細胞におけるMAPキナーゼの活性化を検討した。経口投与群はコントロール群と比較して、下痢、下血も抑制され、第4週までは体重の減少も抑えられた。しかしその後の体重はコントロール群と有意差が認められなかった。また皮下注群では、昨年行ったDSSモデルと同様にコントロール群と有意な差が認められなかった。 2.腸管の炎症の程度を肉眼的および組織学的に評価するとともに、腸管粘膜組織におけるp38MAPキナーゼの活性化をウェスタンブロットおよび免疫組織化学により検討した。組織学的には、経口投与群において炎症性細胞の浸潤が抑制されていたが、皮下投与群とコントロール群では有意差を認めなかった。MAPキナーゼの活性化は経口、皮下注群で抑制される傾向を認めたものの有意差は認めなかった。
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