研究概要 |
1.BLISA法による抗CD3抗体刺激によるIELよりのIFN-γ産生 無刺激のIELにはIFN-γの産生は認められなかった。これに対して、抗CD3抗体により活性化されたIELは大量のIFN-γを産生した。抗CD3抗体で刺激されたIELにアラキドン酸を投与した場合、アラキドン酸投与により濃度依存性にIFN-γ産生の抑制が見られた。リノール酸やオレイン酸でも20μM以上の高濃度を投与すると、IFN-γ産生の抑制が認められた。これに対し、中鎖脂肪酸であるオクタノイン酸の場合、高濃度の50μMを投与してもIFN-γの産生に著明な抑制は見られなかった。 2,RT-PCR法によるIFN-γmRNAの検討 脂肪酸無添加のコントロールやDPC単独投与に比較して、アラキドン酸、リノール酸、オレイン酸ではIFN-γmRNAの発現が低下した。オクタノイン酸では有意な差は見られなかった。 3.^3H-thymidineの取り込みによる細胞増殖に対する脂肪酸の影響 抗CD3抗体刺激を行ったアラキドン酸を投与した場合、10μMの場合も抗CD3抗体刺激のみに比較して細胞増殖は抑制されているが、50μMと高濃度で投与した場合はさらに抑制が認められた。オクタノイン酸に関しては50μMでも細胞増殖に抑制は見られなかった。 以上の結果により抗CD3抗体で刺激した上皮間リンパ球に長鎖脂肪酸を接触させることによりIFN-γ産生や細胞増殖が抑制されることを示した。 この結果により腸管腔内の上皮間リンパ球への長鎖脂肪酸の接触はリンパ球機能に影響し、粘膜免疫機構を修飾する可能性が考えられた。IFN-γ産生の抑制は、IFN-γ mRNAの発現においても認められ、転写レベルでの抑制であることが示唆された。
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