核内レセプターPPARγは脂肪細胞や免疫組織、副腎、消化管粘膜に発現しており脂肪細胞の分化・増大、グルコース代謝の調節に深く関わっている。15d-PGJ2、チアゾリジン系薬剤(TZDs)がPPARγに対するリガンドでありTNF-αの作用に拮抗することが最近示された。潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性炎症性腸疾患では活性化した単球・マクロファージのみならず活性化Tリンパ球、上皮細胞からもTNF-αが産生され局所サイトカイン・ケモカインネットワークのトリガーになり、腸管局所において炎症を惹起・持続させている。今回の研究ではPPARγリガンドの免疫担当細胞に対する作用を追究することを目的とし、培養リンパ球、上皮細胞に対する増殖、サイトカイン産生に対する影響およびそのメカニズムを解析した。 まず最初にcell lineを用いての検討では、Tリンパ球由来のJurkatおよびマクロファージ由来のU937のいずれにおいてもPPARγの発現をみとめた。健常人より単離した末梢血および大腸粘膜内単核球においてもPPARγの発現をみとめ、活性化刺激の有無によらず、Tリンパ球においては比較的constitutiveにPPARγが発現していると考えられた。in vivoにおける検討では、健常人、潰瘍性大腸炎、クローン病大腸粘膜いずれにおいてもPPARγの発現量はかわらず、炎症においてその発現が影響を受けないと考えられた。 これらのPPARγを発現している細胞に対するPPARγリガンドの作用を検討したが、末梢血単核球、粘膜内単核球に対してPMA+ionomycin、抗CD3抗体+抗CD28抗体による活性化刺激に対して増殖活性およびIL-2産生を抑制したが、15d-PGJ2の抑制効果の方がピオグリタゾンに比して強かった。15d-PGJ2はIL-12+IL-18刺激によるインターフェロンγ産生に対しても抑制効果を示した。DSS腸炎モデルマウスに対して腹腔内投与を試みており、in vivoでの有効性の評価を検討中である。
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