目的:TGF-βは非実質細胞において発現が誘導され、肝線維化や肝再生に重要な役割を果たすと考えられている。また、肝障害時は肝臓においてリンパ球の浸潤が強く見られる。一方、各種リンパ球もTGF-βを産生し、免疫抑制に関与することが明らかにされてきた。しかし、障害肝における肝リンパ球からのTGF-βの産生については明らかではない。我々はマウスの肝障害モデルと肝細胞および伊東細胞を用い、肝障害時の肝リンパ球におけるTGF-βの発現と活性について検討を行った。方法:マウスにCCl4またはConcanavalin Aを投与し急性、慢性肝炎を作成した。肝臓を摘出し、比重遠心法にて肝リンパ球を分離、肝リンパ球をカウントした。その後、Northern Blot Hybridization法にてTGF-β mRNAの発現を検討した。また、肝細胞と伊東細胞にp3TP-Luxを導入し、肝リンパ球とCo-culture後、Luciferase活性を測定した。結果:正常肝リンパ球はTGF-βを発現しておりp3TP-Luxを導入した肝細胞および伊東細胞において、肝リンパ球とのCo-cultureによってLuciferase活性は誘導され、その活性が抗TGF-β中和抗体にて抑制された。また、急性および慢性肝障害モデルでは共に、肝組織全体においてTGF-βの発現誘導が認められたのに対し、肝リンパ球での発現の変化はほとんど認められなかったが、肝リンパ球の総数は急性、慢性ともに障害肝では2-3倍に増加していた。結語:肝リンパ球はTGF-βを発現しており、肝細胞および伊東細胞に対して活性を有していた。また、肝リンパ球におけるTGF-βの発現は肝障害時に変化は認めなかった。しかし、肝リンパ球が増加するため肝リンパ球由来のTGF-βの発現の絶対量は正常肝に比べ増加していると考えられる。したがって、肝障害時には肝リンパ球由来のTGF-βが肝線維化、肝再生に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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