我々は本研究において、自己免疫性肝炎(AIH)患者の末梢血リンパ球を用いてヒト型モノクローナル抗体を作製した。この抗体は以下のような特徴をもっている。 1)IgMクラスの抗体で、ヒトだけでなくマウスの肝細胞と反応するが他の臓器由来の細胞とは反応しない。 2)正常ヒト血清存在下でその認識する細胞を障害することができる。 3)この抗体をマウスに注入することで、マウスにおいてヒトAIHのモデル作成が可能となった。 4)この抗体が認識する肝細胞関連抗原を用いたELISA法の確立を試み、この方法を用いると、生成した2E3抗体は抗体量依存性に反応するのに対し、対照として用いたミエローマ患者由来のIgMとは反応しない事が明らかになった。このELISA法を用いて、6例のAIH患者血清を測定し、標準に対するEIA Unit(EU)で算定したところ2.13-6.04(平均4.18±1.5)であり、健常者のそれは平均1.23±0.3であった。すなわち、AIH患者血清中に、我々が作製したモノクローナル抗体と同じ特異性を持つIgM型自己抗体が存在している可能性を明らかにできた。今後は、この分子の詳細な化学性状の解析を行い、より安定したELISA法の確立を試みる予定である。
|