平成13年度はアンジオテンシンII受容体拮抗薬の腫瘍増大に対する作用をACE阻害薬と比較した。C57BL/6マウスにLewis lung carcinoma(LL/2)細胞を2x10^5個皮下注して、原沫が入手可能であったACE阻害薬:イミダプリルと同じく入手可能であったアンジオテンシンII受容体拮抗薬:カンデサルタンをそれぞれ常用量である0.2mg/kg/dayおよび0.5mg/kg/day飲料水より投与した。腫瘍径、生存曲線をイミダプリル群、カンデサルタン群、そしてそれらを含まない飲料水のみのコントロール群とで比較したところ、腫瘍径、生存曲線には3群間で有意差がなかった。そこでマウスと人間の代謝能の違いから、イミダプリルおよびカンデサルタンの投与量が足りないのではと考え、それぞれ2mg/kg/dayおよび5mg/kg/dayを投与したところ、カンデサルタン群ではコントロール群と比較して有意差はないものの、イミダプリル群では腫瘍径がコントロールに比べ有意に大きくなり、生存曲線が有意に短縮した。腫瘍組織の血管新生を第8因子にて免疫染色して、定量したところイミダプリル群では有意に血管新生が亢進していることが観察された。これまで、ACE阻害薬は腫瘍の血管新生を抑制する報告が多々なされているが、ACE阻害薬の種類によりそれが異なることが判明した。さらに、臨床的な疫学情報システム調査の面で方法論の確立において大きな進展があった。東北大学医学部附属病院の医療情報システムの完全電子カルテ化に際して、独自のシステムを立ち上げ、使用薬剤から患者を検索するシステムを確立した。その際、CTなどの画像のデーターや病名とリンクさせ、瞬時に肺癌対象患者を進行期別に検索することが可能となった。この成果はelectrical publicationとしてBritish Medical Journalのon-line journalにて発表した(http://bmj.com/cgi/letters/323/7325/1344)。また在宅看護の中央管理システムと我々のデーターベースをリンクさせ在宅看護の面から患者情報をフォローアップするシステムの準備段階を立ち上げた。その成果の一部をLancet誌上に発表した(Lancet 2001 ; 357 : 1451)。現在、さらにシステム構築中である。
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