エピモルフィンを介するの肺の再生上皮及び悪性上皮と間質の相互作用の解析する目的で、in vivoの系としてヒト、マウスの肺組織、in vitroの系としてヒトの気管支上皮及び肺胞上皮細胞を用いて以下の実験結果を得た。ノザンブロット、ウエスタンブロット、免疫染色、In situ hybridizationによる検討で、マウスやヒトの正常肺および種々の肺線維症ではエピモルフィンは正常上皮周囲間質に発現し再生上皮周囲間質に増加していた。上皮再生における上皮・間質の相互作用に本因子が関与することが示唆された。また、蛍光二重染色の共焦点顕微鏡解析で、間質性肺炎組織の肺胞腔内線維化巣にエピモルフィンが、その線維化巣を被覆する再生被覆上皮にuPAが局在する事がわかった。更にELlSA解析で、組み換えエピモルフィン蛋白は、ヒト初代培養気道上皮細胞、2型肺胞上皮細胞A549、気管支上皮細胞BEAS-2B及びBET-1AにおいてuPAの発現を増加させる事が分かった。線維化病巣のエピモルフィンは、一部uPAを介して線溶系に作用し上皮再生、組織再構築に関与する事が示唆された。 一方、マウス転移性肺癌モデル肺やヒトの肺癌(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌)の癌性間質では、種、分化度、組織型に無関係に、エピモルフィンが発現低下していた。エピモルフィンの上皮分化誘導の特徴として、細胞レベルでの極性の誘導があるので、本因子の独特な発現低下はいわゆる極性のない癌細胞においては細胞の極性誘導が破壊された可能性が示唆される。これらは、癌性間質と良性間質の違いを見い出すものでもあり、癌自身の異常構造形成の関連性などからも、正常再生上皮の分化誘導蛋白として独特なエピモルフィンの重要性を示唆するものである。
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