VILI(Ventilator-Induced Lung Injury人工呼吸器肺損傷)は近年人工呼吸器管理を行う際に重要な概念となっている。我々は8週齢雄性ラット(Sprague-Dawley rat)を使用し、high tidal(15ml/kg)とlow tidal(7.5ml/kg)で6時間換気後、生体顕微鏡および共焦点顕微鏡で肺微小循環中の血球動態を観察した。その結果、high tidal群では細動脈、細静脈および毛細血管中の白血球の赤血球に対する相対速度の低下とローリング白血球の増加を確認した。 免疫組織染色による接着分子の発現の検討では、ICAM-1、VCAM-1、P-selectinの有意な発現増強も確認し、これらの白血球のローリングおよび相対速度の低下の原因であることを証明することができた。 白血球を分離し肺微小循環動態を観察したところ、好中球がローリングに関与し、一方リンパ球はローリングに関与しないことが判明した。 これらのローリング好中球と赤血球に対する好中球の相対速度は抗ICAM-1抗体、fucoidin(selectinのブロック)の投与により、ローリング好中球の出現頻度の低下、相対速度の回復を認めた。 免疫組織染色では接着分子が細動静脈や毛細血管等どの血管に発現しているか確認困難なため、ICAM-1とVCAM-1をin vivo染色し共焦点レーザー顕微鏡を用い接着分子発現血管の同定を行った。その結果世界初のVILI肺の微小血管中の接着分子の染色に成功した。 今後は抗VCAM-1抗体、抗P-selectin抗体によるブロック実験を予定している。VILI肺においてNFκBの活性が増強し、ステロイド投与により活性が抑制されるとの報告があり、ステロイド前投与により接着分子の発現の抑制とローリング白血球の出現頻度の低下が認められるかどうか検討する予定である。
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