昨年度、我々はSPG4の本邦2家系について、新規の挿入変異とミスセンス変異を同定して報告した。今年度は、別のSPG4の本邦1家系について、臨床像とSPG4遺伝子の17個のexonを解析した。本家系は2世代4名より成り、配偶者を除く3名が患者であった。臨床的にはいずれも幼小児期の発症であり、純粋に痙性対麻痺を呈していた。3名の患者は全員、SPG4遺伝子内intron13のdonor-acceptor siteにgt→gaの変異を認めた。この変異により、exon13をskipするalternating splicingを起こすことが確認された。2年間の研究により、本邦でも欧米と同様に、常染色体優性遺伝形式をとる痙性対麻痺のうち、SPG4の頻度が高いと考えられた。 さらに、spastin蛋白の機能を解析する目的で、その局在を検討した。spastinは核移行シグナルを持つと予想されたが、発現解析の結果、全長蛋白(1-616アミノ酸)は、細胞質にdot状に局在した。また、N末部分蛋白(43-139アミノ酸)は細胞質に局在し、核周囲に集積する傾向が見られた。C末部分蛋白(358-616アミノ酸)は、細胞にdiffuseに発現した。N末部分蛋白を発現した細胞をα-tubulinで免疫染色した結果、tubulinの局在が変化しており、微小管重合阻害剤であるnocodazole処理により、核周囲への集積は一部の細胞で解離した。これらの結果からspastinのN末領域は微小管の動態に関与していることが考えられた。
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