JNK結合蛋白質1b(JIP1b)はJNKカスケードのキナーゼ群を結合するスカフォールド蛋白質である。私共は、アミロイド前駆体(APP)をベイトとして酵母ツーハイブリッド法によりJIP1bがAPPに結合しうることを見い出した。JIP1bはそのC末端にあるリン酸化チロシン結合ドメイン(PID)を用いてAPPの細胞内ドメインに含まれるGYENPTYモチーフと直接結合する。この結合強度はFe65より若干弱いものの、X11やmDab1とほぼ同程度であった。また、JNKはJIP1bを介してAPPと複合体を作ることを示した。以上は、J.Neurosci.21、pp6597-6607及び、31st Annual Meeting of Society for Neuroscience(San Diego)にて報告した通りである。 更にAPPのJNKのカスケードへの関与の解析を試みた。COS細胞にAPPをトランスフェクションすると、JNKは若干活性化されるが、JIP-1bを共発現させるとJNK活性は抑制される。JIP1bに結合しうるJNKの上流キナーゼであるMKK7bおよび、MUKを共発現させると、JIP1bやAPPの発現の有無に関わらずJNKは活性化される。従って、APP-JIP1bの結合がJNKカスケードに及ぼす影響は更なる検討を要する。 JIP1bの部分ドメインによる酵母ツーハイブリッド法を用いた検索では、予期していたGCKファミリーのキナーゼは見出せなかったが、LRPがJIP1bのPIDに結合するものとして見い出された。LRPはアルツハイマー病の危険因子であるアポリポ蛋白E4(ApoE4)の受容体であることから、LRPがAPPのシグナル経路とJIP1bを介してどのように関連しうるのか解析を試みている。
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