目的)両側総頸動脈閉塞で大脳にグリオーシスと組織障害が観察される。本研究は慢性低潅流脳におけるcortical spreading depression(CSD)による反応について、^<31>P-magnetic resonance spectroscopy(^<31>P-MRS)とnear infrared spectroscopy(NIRS)を用いて、エネルギー代謝と脳循環動態を同時に観察することを目的とした。 方法)9週齢の雄Wistarラットをハロセン麻酔下で両側総頸動脈を剖出し、3-0絹糸で永久結紮(BCCAO)した群と、結紮しない群(Sham)に分類した。1-4週間後に再度ハロセン麻酔し、生理学的パラメーター測定の為、右鼠径動脈をポリエチレンカテーテルにて確保した。両側の側頭部頭蓋骨に直径約2.5mmのBarr holeを開け、同部のDuraを剥離し、CSD誘発のための頭窓を作成した。α-クロラロース(40mg/kg)+ウレタン(400mg/kg)の腹腔内麻酔に変更し、ラットを31P-MRS装置に設置し、頭部にNIRSプローブを装着した。CSDは0.5M KCl 2-3滴を滴下し誘発した。20分毎に安静時、CSD誘発後20分、40分、60分にPCr、Piのピークから面積を求めたPCr index (PCr/PCr+Pi)と、Piのケミカルシフトから細胞内pHを算出した。NIRSで酸素化、還元およびtotalヘモグロビンの変化を経時的に観察した。測定後に脳の組織変化を観察した。 結果)PCr indexおよび細胞内pHに両群間で有意差はなかった。NIRSシグナルは両群間で同様であった。組織学的には、BCCAO群において有意なグリオーシスの増加がみられた。 考察)両側総頸動脈閉塞で大脳皮質にグリオーシスが起っても、CSDによる皮質部エネルギー代謝と脳循環動態には変化をきたさないことが考察された。
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