研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や末梢神経損傷における運動ニューロン死の原因について,活性酸素・窒素種の深い関わりが指摘されている.一方,成体ラットでの末梢神経切断では運動ニューロン死は明瞭でないが,末梢神経引き抜き損傷では運動ニューロン死に先だって一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性が上昇することが知られている.しかし,NOSの活性上昇が運動ニューロン死の直接の原因であるか否かはなお明確でない.本研究では,成体運動ニューロン死におけるNOSの役割について明らかにするために,neuronal NOS(nNOS)のsense,antisense cDNAを発現する組換えアデノウイルス・ベクターをそれぞれ作製した.ラットよりクローニングされたnNOSのcDNAを,アデノウイルス・ゲノムからE1A,E1B,E3遺伝子を欠損したウイルスDNAをもつ発現コスミドカセットpAxCAwtに組込んだ.このコスミドカセットDNAと親ウイルスDNAを293細胞にco-transfectし,得られたウイルス液を293細胞で継代し精製sense nNOS発現ウイルス(AxCArNNOS),antisense nNOSウイルス(AxCArSONN)を得た.これらウイルスの培養COS1細胞における感染発現をウエスタンブロットおよびRT-PCRにより確認した.今後これを用い,運動ニューロン死の明確でない末梢神経切断モデルにsense NOS遺伝子を導入することで運動ニューロン死を惹起できるか,逆に,運動ニューロン死とNOSの発現の明瞭な末梢神経引き抜きモデルにantisense NOS遺伝子を導入することで運動ニューロン死を防ぐことができるかを検討する予定である.
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