ミクログリアに対する外来遺伝子導入には、従来、microingection、transfection、recombinant virus vectorによるinfectionなどが用いられてきたが、いずれの方法も導入効率が低く、遺伝子改変ミクログリアの大量調整は困難であった。組換えアデノウイルスベクターは、宿主域が広く高効率に遺伝子導入できることが特徴だが、ミクログリアには極めて低効率にしか感染しないことが知られている。この原因を検索するため、我々は、ミクログリアの感染に必要なCAR(cytomegarovirus adenovirus receptor)およびαV integrinの発現の有無を、マウスミクログリア細胞株MG5およびマウス初代培養ミクログリアより抽出したmRNAを用いRT-PCR法により検討した。これらの細胞ではCARの発現は認められなかったが、αV integrinは高発現していた。CARはアデノウイルズの細胞接着に必須の受容体であり、この欠如が低感染効率の原因と考えられた。そこで、我々は、アデノウイルスのペントンベースのノブの部位を改変しαV integrinに接着するRGDモチーフを挿入した改変ウイルスベクターを作製して導入効率の改善を試みた。この改変ウイルスを用いることにより、従来型アデノウイルスベクターより約20倍近い感染効率の改善が得られ、有効簡便な遺伝子導入法になりうることが明らかとなった。現在このウイルスベクターを用いてラットミクログリア細胞株への遺伝子導入、およびそのラット脳梗塞モデルヘの細胞注入実験を進めているところである。
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