研究概要 |
本研究の目的は、心肥大や心不全といった病態におけるプロスタノイドの役割を明らかにすることである。我々は、プロスタノイド受容体欠損マウスを用いて、以下のことを明らかにした。 1.急性心不全のモデルとして、虚血-再潅流障害のin vivoとex vivoの実験を行った。in vivoの実験では、左冠動脈を1時間結紮し、その後、再潅流を24時間行い、梗塞サイズを測定した。この結果、心筋梗塞サイズは野生型と比較してIP欠損マウスにおいて著しい増加を認めた。このことは、心筋の虚血-再潅流障害に対して、産生された内因性PGI_2は抑制的に作用することを意味する。次に、ex vivoの実験では、摘出心をLangendorff式に定圧で潅流し、心臓への潅流液の供給を遮断することにより40分間もしくは65分間虚血にした後、再潅流を40分間行い、冠潅流量、developed tension、creatine kinase(CK)遊出量を測定した。さらに再潅流終了時における組織中のATP含量を測定した。この結果、野生型マウスに比較し、IP欠損マウスでは、再潅流時のdeveloped tensionの回復が抑制され、CK遊出量は高値を、ATP含量は低値を示した。これらの結果、虚血時に産生されたPGI_2による心筋保護作用には、心臓への直接作用も含まれていることが明らかとなった。 2.さらに、心筋細胞、心線維芽細胞を酵素処理により分離し、プロスタノイド受容体のmRNA発現をRT-PCRにより解析した。その結果、心筋細胞には、EP_3,EP_4,FP,IP,TPの5種類の受容体が発現し、心線維芽細胞には、これにEP_2を加えた6種類の受容体が発現していることが明らかとなった。
|