研究概要 |
不全心では、心筋細胞内の収縮蛋白、カルシウム動態を含むイオン環境、エネルギー代謝などさまざまな点で正常な心筋細胞とは異なることが知られている。特に収縮蛋白やカルシウム動態の異常は、直ちに心収縮力の異常、エネルギー代謝のミスマッチを招来し更なる心不全の進行を惹起する。過去に報告した大型動物と同様、ラット・フェレットなど小動物の正常心標本においても期外収縮後に一過性交互脈が認められた。また各心拍の収縮性の強弱は同時に細胞内カルシウムトランジエントの強弱を伴うことが明らかとなった。さらに、収縮能の基本的なメカニズムを探るため、心室容積で変化に伴うの圧波形変化とカルシウムトランジエントから、負荷依存性の左心室の挙動について差分方程式モデル<4-State Biochemical Interaction Model)を考案・解析した。心筋の負荷依存性の規定因子についてトロポニンのカルシウム親和性およびアクチン・ミオシンの相互作用の二つが考えられる。4-State Modelによる解析の結果、左室容積を変化による筋長変化に伴い、トロポニンのカルシウム親和性は影響を受けないがアクチン・ミオシン相互作用を規定する因子が負荷依存性をもつ可能性が示唆された。この解析は臓器レベルの心標本での筋線維のカルシウム感受性を評価することにも成功した(Am J Physiol,2002)。すなわち筋線維を取り出すことなく収縮蛋白機能を評価することを可能にした。次年度はこれらの解析を実験的心不全モデルに適用し、解析法の妥当性を評価する。
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