動脈硬化性病変におけるMCP-1の役割を生体レベルで解明し、動脈硬化の新しい分子療法の可能性を探ること、抗MCP-1療法が動脈硬化による血管病治療の新戦略になりうるかどうかを目的に以下のことを明らかにした。 1.NO合成抑制モデル: 1)MCP-1中和抗体の効果 MCP-1中和抗体(1-2mg/kg per day)の投与によってNO産生抑制3日後に生じる冠血管壁への単球の侵入が阻止できることを明らかにした。また、MCP-1中和抗体の投与によって、NO産生抑制28日後に生じる血管壁のリモデリングのうち、内・中膜の肥厚は抑制したが、線維化は防止できないことを明らかにした。MCP-1中和抗体投与によって血管壁のアンジオテンシン変換酵素の活性化はされなかった。すなわち、MCP-1はアンジオテンシン変換酵素の下流にあることが示された。 2)MCP-1変異型遺伝子7ND mutantの遺伝子導入の効果 HVJ-liposome法、もしくはプラスミドの状態でのMCP-1 7ND mutantの骨格筋への遺伝子導入によってNO産生抑制3日後に生じる冠血管壁への単球の侵入が阻止できることを明らかにした。また、中和抗体と同様にNO産生抑制28日後に生じる血管壁のリモデリングのうち、内・中膜の肥厚は抑制したが、線維化は防止できないことを明らかにした。 2.ApoEノックアウトマウス: ApoEノックアウトマウス(ApoE-KO群)での動脈硬化モデルにおいて病変部位に単球の浸潤とMCP-1の発現が生じることを確認した。次に、動脈硬化病変が完成するApoE-KO群12週齢から7ND mutantの遺伝子導入(2-4週毎)を行い、12週後に動脈硬化病変(単球/マクロファージの浸潤、内膜肥厚、動脈硬化面積)を評価したところ、動脈硬化の進行を遅らせることができた。
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