研究概要 |
Geranylgeranylacetone(GGA)の経口単回投与が心筋のprotein kinase C(PKC)の活性を高め,これはPKCδの核内から細胞膜成分へのtlamslocationによることが判明した。PKCの特異的阻害薬であるChelerythrineを用いた薬理学的実験から,このPKCの活性化がheat shock factor 1(HSF1)のリン酸化をきたし,HSF1が心筋細胞の核内へと移動し,heat shock elementに結合することによってHSP70の遺伝子発現が冗進することがものと考えられる。またHSP70誘導から心筋保護効果発現に至るend effectorとしてミトコンドリアKATPチャネルが少なくとも一部関与することを確認した。これはLangendorff法による摘出心灌流実験で,ミトコンドリアKATPチャネルの特異的阻害薬である5-HDを灌流液に加えると,GGA投与による左室拡張末期圧の上昇の抑制が有意に阻害されることで証明した。 一方,GGAによるHSP70発現の局在についても検討を進めている。まず内皮機能について,GGAで前処置した心臓においては,冠動脈の内皮機能が良好であることを確認した。またGGAの心筋保護効果がL-NAMEの灌流により阻害されたことからも,GGAの心筋保護作用に血管内皮機能が少なくとも一部関与していることは間違いないと考えられる。現在,電子顕微鏡レベルの免疫染色によって,GGAによるHSP70の発現の組織内(心筋細胞と血管内皮のどちらが優位であるか)および細胞内の局在を詳細に検討中である。
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