虚血性心疾患の危険因子として、糖・脂質代謝異常が代表として挙げられる。近年、ステロイドホルモン核内受容体スーパーファミリーの一種であるペルオキシソーム増殖剤応答性レセプター(peroxisome proliferateor-activated receptor : PPAR)が糖・脂質代謝に重要な役割を担っていることが明らかとなっており、心血管疾患への関与が示唆されている。PPARは、動脈硬化の主たる病巣である血管内皮細胞、血管平滑筋細胞のみならず、心筋細胞にも存在するが、心筋細胞におけるその役割については未だ不明の点が多い。 虚血性心疾患の発症、進展においては、血管壁における炎症過程が大きく関与しており、同過程は多数のサイトカインや増殖因子、NOなどの生理活性物質により機能調節が行われている。IL-18は多機能的に働く炎症性サイトカインであり、IL-18システムが他の炎症性サイトカインを誘導し、さまざま疾患の病態悪化に関連することが推測されている。 我々は以前に、虚血性心疾患の発症予測因子として着目されているC-reactive protein (CRP)が、培養内皮細胞におけるインターロイキン18(IL-18)産生増加作用を有することを確認した。今回我々はこの実験系を利用して、PPARの血管内皮細胞における役割について検討したところ、PPARリガンドによりCRPによるIL-18産生増加作用は有意に抑制された。このことから、PPARは炎症性サイトカインの産生抑制作用を介して動脈硬化を主体とする虚血性心疾患の進展に関与していることが示唆された。
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