研究概要 |
目的:冠動脈内ステント留置後の患者に葉酸を長期投与(6ヶ月間)することで、冠動脈内皮機能を改善するか否か、冠動脈新生内膜の増殖(ステント内)および新規冠動脈病変(対照血管)を抑制するか否かについて検討する。さらに、その改善効果のメカニズムをホモシステインとの関連を含め検討する。 対象:二重盲検プラセボコントロール研究し、左冠動脈前下行枝または回旋枝のいづれかに有意狭窄があり、経皮的冠動脈内ステント留置術を施行する患者を対象とした。心筋梗塞患者、心不全患者、左室肥大患者、高度腎不全患者は除外した。方法:1)ステント留置部の血管径測定(CAG):冠動脈内ステント留置部位において、冠動脈造影(CAG)画像でデンシトメトリーによる血管径の評価(最小血管径:MLD,対照血管径:RD)を行った。現在2例づつの検討で葉酸群のMLDは対照群に比べ約22%増加している。2)対照血管(左冠動脈ステント非留置血管)の血管反応測定:対照冠動脈にドップラーフローワイヤーを挿入し冠動脈造影を併用することで対照血管の冠血流量を測定し、血管反応を検討した。内皮依存性血管拡張反応(アセチルコリン冠動脈内投与)、内皮非依存性血管拡張反応(硝酸イソソルビド冠動脈内投与)、最大血管拡張能(パパベリン冠動脈内投与)を検討した。葉酸群の内皮依存性拡張反応は改善している傾向である(+32%)。3)各種指標の血中濃度測定:対象患者における、血中の総ホモシステイン、葉酸Vit B5,Vit B12,酸化ストレスの指標(MDA-modified LDL,尿中8-OH dG)、NO代謝産物(尿中Nox、テトラヒドロビオプテリン)、ADMA、喫煙の指標(コチニン)を測定し検討中である。今回の検討からは葉酸群は対照群に比べ、内皮依存性拡張反応が改善し、最小血管径が増大している可能性が示唆されているが、症例数が少ないため今後症例を重ねる予定である。
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