研究概要 |
本年は昨年に引き続きカベオリン-3のアポトーシスにおける役割を検討した。我々は、野生型カベオリン-3(Ad. Cav-3)とdominant negativeカベオリン-3 cDNAを発現するアデノウイルス(Ad. Cav-3 Δ)を構築した。このdominant negative変異体は、肢帯型筋ジストロフィーの原因遺伝子であり、この変異体を発現すると野生型カベオリン-3の細胞内オルガネラへの蓄積を来たし、その機能を阻害することが示されている。これらを用いてカベオリン-3の心筋細胞のアポトーシスにおける役割を検討した。昨年と同様にアポトーシスは新生児ラット培養心筋細胞に低酸素負荷を行うことにより誘導した。アポトーシスはTUNEL染色およびDNA ladderingで評価した。昨年報告したように低酸素負荷を行った細胞ではアポトーシスがみられた。前もって野生型カベオリン-3を発現させておくとLacZ感染に比し低酸素によるアポトーシスの増強がみられた。反対にAd. Cav-3 Δを感染させた細胞ではTUNEL陽性細胞は減少し、アポトーシスが軽減した。これらの細胞でAktとPI3-kinaseの活性を検討するとAd. Cav-3ではAkt, PI3-kinaseの活性抑制がみられ、Ad. Cav-3 Δの感染ではAkt, PI3-kinaseの活性増強がみられた。これらの結果からカベオリン-3はアポトーシスに対して促進的に働き、その機序としては直接的なPI3-kinase-Akt系の活性抑制が関与すると考えられた。また肥大心筋細胞での検討としては、心筋細胞にノルエピネフリンを添加することにより同様の検討を行っている。Preliminaryな結果であるが、上記とほぼ同様の結果が得られている。従ってカベオリン-3のアポトーシスへの関与はアポトーシスの原因に依存せず普遍的であることが推測された。これらの結果は現在投稿中である。
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