研究概要 |
動脈圧反射系は血圧入力から遠心性交感神経活動までの中枢弓と、遠心性交感神経活動から血圧応答までの末梢弓に分けて記述できる。血圧調節の高速性や安定性を評価する上で、中枢弓及び末梢弓の過渡応答を定量化し、モデル化することが重要である。これまで、動脈圧反射系の過渡応答は正常血圧領域については詳しく研究されてきたが、高血圧及び低血圧領域での過渡応答は不明であり、すべての血圧レベルにおける動脈圧反射の機能を1つのモデルで包括的に記述することが不可能であった。そこで、本研究では麻酔ウサギにおいて、動脈圧受容器にかける平均圧を100、130、70mmHgに変化させた条件下で、2値白色雑音入力を行い、動脈圧反射の中枢弓及び末梢弓の伝達関数を推定した。その結果、入力平均圧が低い状態では正常血圧と比べて、中枢弓の伝達関数のゲインが低下したが(0.96±0.17 vs. 0.56±0.21,P<0.01,n=9)、入力平均圧が高い状態では有意な変化がなかった。末梢弓の伝達関数は中枢弓に比べて入力平均圧の依存性が小さかった。以上のことから動脈圧反射の末梢弓は中枢弓に比べて動作範囲が広いことが判明した。これに対して動脈圧反射の中枢弓は動作範囲が正常血圧から高血圧側に偏っており、低血圧領域では十分に機能しないことが判明した。次年度に動脈圧反射の入力振幅依存性を明らかにするとともに、本年度の知見と合わせて、すべての血圧レベルにおいて動脈圧反射の過渡応答をできるだけ少ないパラメータで記述できるような数学モデルを作成する。動脈圧反射の過渡応答に関わるこのような基礎データは、血圧異常の病態の解明や治療法の開発に役立つと期待される。
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