【緒言】難治性癌性胸膜炎を伴う胸線原発T細胞性悪性リンパ腫患者胸水より、線維芽細胞依存性に増殖する細胞株(L-KIM)を樹立し、これまでの研究ではその線維芽細胞上における増殖動態および接着分子の関与について解析し、L-KIMが線維芽細胞上でベータ1インテグリンを介する接着依存性増殖を示し、その接着については主にVLA-4(CD49d/CD29)及びVLA-5(CD49e/CD29)の両者が関与していると考えれる実験結果が得られた。その実験結果を踏まえ本年度においてはマウスへの腫瘍細胞移植についてその可否を検討し、in vivoの抗ベータ1インテグリン抗体投与による腫瘍抑制効果を検討した。 【方法】SCIDマウスの皮下にL-KIMを種々の細胞数で接種し、腫瘤形成の有無を確認した。また、抗ベ一タ1インテグリン抗体(4B4)をマウス1匹あたり0.2mgを腫瘍細胞接種開始より5日間腹腔内投与し、その増殖抑止効果について実験した。 【結果および考察】マウス1匹あたり1X10^6、5X10^6、1X10^7のL-KIMをそれぞれ接種し、腫瘤形成について観察した結果、いづれの場合においても接種後1ヵ月で腫瘤が形成され始めた。腫瘤は他に転移することなく、接種した局所のみで増殖し続け、in vitroので研究結果に矛盾しない状況であった。腫瘍をパラフィン固定し、切片にして顕微鏡観察した結果は、腫瘍細胞が密に並んでおり、悪性リンパ腫の像を呈していた抗ベータ1インテグリン抗体では腫瘤形成を完全に阻止することはできなかったが、その増殖速度を抑制することが可能であった。
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