研究概要 |
心臓神経堤細胞と冠動脈脈管形成の関与について検討を重ねている。心臓神経堤細胞自体は冠動脈中膜等に直接分布しないといわれているが、心臓神経堤の除去により作成可能な総動脈幹心では冠動脈パターン異常が比較的多く認められる。そこで、本年度はウズラ内皮特異抗体QH1を利用して冠動脈について検討を進めるために、ウズラ胚を用いて総動脈幹心を作成し、冠動脈形態について観察を施行した。 ウズラ2日胚の心臓神経堤細胞を電気的に焼灼除去し、ニワトリ卵殻へ移動した後、更に艀卵を続け、9日胚を中心に冠動脈開口部について観察した。126例の生存胚のうち、コントロール群による正常心は30例、焼灼術による総動脈幹心が47例、焼灼不十分で正常心が得られたものが30例、両大血管右室起始等の異常心ができたものが19例であった。正常心は全て、左右2本の冠動脈を有し、右冠尖から右冠動脈が、左冠尖から左冠動脈が起始していた。総動脈幹心では、9例が単一冠動脈、38例が左右の冠動脈を有していたが,その起始部は様々であった。 血管内皮成長因子であるVEGF、血管新生過程において重要なTIE2、ウズラ内皮特異抗体QH1を用いて免疫染色を施行したところ、それぞれ、分布領域が異なる傾向にあることが判明した。QH1はウズラ内皮特異抗体のため、これを目安として以下の因子を検討した。VEGFは冠動脈内皮では検出できたが、大血管内皮では検出されず、また、心筋でも検出されたが、緻密層と肉柱とで分布が異なった。TIE2はVEGFとは異なり、血管内皮も全てにおいて検出できるわけではなかった。神経軸索ガイダンス因子であるニューロピリン1、セフォマリン3C等、他の因子については現在検討中である。
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