本研究は、事象関連脳電位の一つである随伴性陰性変動(CNV)とCNV回復過程を用いて、注意の発達を引き起こす脳機能の発達的変化を明らかにすることを目的としたものである。 本年度は、CNV、CNV解消課程に影響を及ぼす要因をとらえるため、成人12名(男子6名、女子6名;平均年齢21歳7ヶ月±8ヶ月)を対象とし5種の異なる条件を用いてCNVおよびその解消課程を測定した。実験した5種の条件とは、第1刺激(S1)の2秒後に提示される第2刺激(S2)直後にボタン押し反応を課した1)単純運動反応課題条件、S1後2秒後に提示される2種のS2刺激のうち標的刺激の直後に運動反応することを課した2)弁別運動反応課題標的条件、非標的刺激の際に反応させない3)弁別運動反応課題非標的条件、S1後2秒後に提示される2種のS2刺激のうち標的刺激を心的に数えさせる4)弁別計数課題標的条件、非標的刺激を無視させる5)弁別計数課題非標的条件であった。 12名の被験者のGrand averageを用いて5条件のCNV、CNV解消課程を比較した結果、CNVの平均振幅には各条件間で統計的有意差は認められなかった。一方、CNV解消課程においてCNVが基線に回復するまでの時間いわゆるCNV解消時間は単純運動反応課題条件が最も長く、その他の条件との間に統計的有意差が認められた。これ以外の条件間にはCNV解消時間の統計的有意差は認められなかった。 この結果から、CNV解消課程には第2刺激の弁別の有無がもっとも強く影響することが推察された。 次年度は、CNV、CNV解消課程の波形を成人と小児で比較し、その差について研究する予定である。そして刺激弁別能力と関係する認知機能を評価し認知機能の発達的変化とCNV、CNV解消課程の関係についてもとらえたい。
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