急性骨髄性白血病(AML)の重篤な合併症として播種性血管内凝固症候群(DIC)はよく知られている。特にAPLはDICの成因と考えられる物質が豊富な細胞内一次顆粒を多数有し、DICを高率に合併するため寛解導入困難であった。最近、オールトランスレチノイン酸(ATRA)を用いた分化誘導療法によって本疾患の寛解導入率が著明に高くなっているものの、このATRA不応例は多く存在している。また、免疫不全マウスに移植して白血病化するヒトAML細胞株はなく、白血病に伴うDICモデルの確率は不可能であった。 われわれはAML患児で重度のDICの合併を認め、ATRA不応であった症例末梢血より、細胞内一次顆粒を多数有した細胞株KOPM-88を樹立した。さらに重度な免疫不全であるNOD/SCIDマウスヘ移植することにより、骨髄浸潤を伴うヒトAML浸潤モデルをはじめて確立し、このモデルを応用してDICモデルの作成を試みた。 NOD/SCIDマウスにKOPM-88細胞を2×107 cellを尾静脈から静注しヒトAML浸潤モデルの作成した。約60日目に生着の目安である下半身麻痺が出現したマウスの脊髄、骨髄、肝臓の組織を採りH-E染色で移植細胞の組織への浸潤を確認した。この時の腎臓はDICの判断に役立つPTAH染色でフィブリンを染色してDICの有無を確認したが、組織学的にはDICの所見を認めなかった。 in vivo AML浸潤モデルマウスにhuman TNF-αを投与することでKOPM-88細胞からの一次顆粒の放出を誘導し、DIC発症を誘導することを試みた。しかし、現状で行える組織学的なDICの有無の判定法では有意差は得られなかった。
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