[研究の背景]神経筋疾患領域での難病ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能障害を特徴とし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に起因する遺伝病である。本遺伝子異常は、現在では人の遺伝子病としては最も頻度の高い疾患と考えられており、様々な病型がmtDNAの変異と関連付けられて報告されている。 [目的]未知の遺伝子異常を発見するための系統的スクリーニングシステムを開発し、遺伝子異常と病型との解明を行う。 [結果および考察]今回、mtDNA(tRNA)の点変異の分離・同定を行った。インフォームドコンセントのもとで、患者より末梢血白血球もしくは主要症状を呈している臓器からDNAを分離した。ミトコンドリアtRNAの全てを網羅する13個のPCR-Fragmentを増幅しSSCPにて泳動後、銀染色を行い変異部位を検出・同定を行った。塩基配列は、Cy5で標識したprimerを用い、Phamacia DNA sequencerにてdirect sequenceを行った。各々の点変異に合せてprimerのを作成し、制限酵素によるPCR/RFLP解析を行い、点変異含量を決定した。また、ミトコンドリアDNA(tRNA)の点変異を認めるミトコンドリア脳卒中の原因にミトコンドリアの血管障害が関与することを見出し、L-アルギニンを使用した新しい治療法を開発報告した(Neurology 2002 12;58(5):827-8)。tRNALeu(UUR)の点変異は、ミトコンドリアRNAプロセッシング障害を来すと考えられた(Neuromuscular Disorders 2003 13(3):259-62)。今後も、系統的スクリーニングシステムを用いmtDNA解析を行うことで、各種遺伝子における発症機構に関する分子生物学的研究を行う。
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