メルケル細胞の分泌顆粒内に存在するクロモグラニンAについて、N末とC末を特異的に認識する抗体を得た。同じくクロモグラニンAを有する副腎髄質においてはこれらの抗体の染色パターンが異なっており、アドレナリン分泌細胞とノルアドレナリン分泌細胞を染め分けることができたが、表皮メルケル細胞では染色性の違いによるサブクラスを得ることができなかった。表皮メルケル細胞が分泌する神経誘導因子の同定については、継代培養上の問題のため解析が中断しているが、代わってニューヨーク大学との共同研究によりDNAマイクロアレイによる表皮角化細胞性神経誘導因子の解析を開始した。近年、急速に技術革新を遂げたDNAマイクロアレイは1万種以上の遺伝子の発現を同時に解析できる画期的な技術であるが、我々は、炎症性サイトカインであるインターフェロンγ、TNFα、インターロイキン1についてのべ数万種類の遺伝子の中からそれぞれのサイトカイン特異的に調節される遺伝子群を探り当て、膨大なデータベースを構築した。これらのデータの解析から、表皮角化細胞が炎症性サイトカインによって、NRG1、NINJ1など数種類の神経誘導因子や軸索伸長および神経接着に関わる因子を産生することが判明した(投稿準備中)。この事実は慢性皮膚炎や創傷治癒の際の表皮内神経侵入との関連で興味深いと思われる。
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