研究概要 |
平成13年度は,炎症性サイトカインの中でも,特に腫瘍壊死因子(TNF-α)および,オンコスタチンM(OSM)が創傷治癒過程,特にコラーゲン合成活性に及ぼす効果をin vivoにおいて検討した。実験には,1型コラーゲンProα2鎖遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子)を組み込んだ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを用いた。6〜9週齢のマウスの背部を剃毛後,6mmトレパンで筋膜直上に達する皮膚欠損創を作成し,創作成72時間後まで無処置として,96時間後および120時間後の2回,創表面の痂皮を除去した後形成されている肉芽組織にTNF-α(200ng)またはOSM(500ng)を塗布し,シリコンガーゼで覆った。次いで,2回目のサイトカイン塗布24時間後に創部から肉芽組織を採取してホモジナイズ後ルシフェリンと反応させた後,ルミノメーターを用いて肉芽組織のルシフェラーゼ活性を測定した。なお,生理食塩水を塗布した創を対照とし,実験はそれぞれn=4で行った。その結果,TNF一α処置創から得られた肉芽組織の単位重量当たりのルシフェラーゼ活性は対照値の約2.0倍の値を示し,OSM処置創では対照値の約4.2倍の値を示し,いずれも有意の増加であった。以上の成績から,TNF一α処置およびOSM処置は,いずれもin vivoにおいて創傷治癒過程における1型コラーゲン合成活性を亢進させることが示唆された。
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