隆起性皮膚線維肉腫(DFSP ; dermatofibrosarcoma protuberance)は皮下に浸潤性に増殖し局所再発傾向が強い、中間度の悪性度を示す腫瘍である。DFSPは第17、22染色体間の再編成により、conagen typeIα1遺伝子とPDGFB遺伝子が融合したfusion遺伝子(COL1A1/PDGFB gene)が存在することが知られている。ヒトDFSP由来腫瘍細胞をskin biopsy時に収集し、in vitro培養系にて継代培養した後、6つのprimary cultureを樹立した。これら腫瘍細胞におけるCOL1A1/PDGFB fusion遺伝子の発現を特異的なprobeを作製し、RT-PCR法及ぴノーザンプロツト法にて確認した。腫瘍細胞におけるPDGFβ型受容体の発現及びそのリン酸化の程度を検討するため、抗PDGFβ型受容体血清にて免疫沈降した後抗tyrosine抗体を用いてウェスタンプロット法を行ったところ、全例でPDGFβ型受容体の発現及び活性化を認めた。次にPDGFβ型受容体の特異的阻害剤(STI-571)によるin vitroでの増殖能に関する影響を検討したところ、60-75%の増殖抑制が認められた。in vitroにおいてCOL1A1/PDGFB fusion遺伝子を発現しているDFSP腫瘍細胞をnudemiceの皮下に移植し、in vivoでの腫瘍形成能を検討したところ、6例中1例の腫瘍細胞が皮下に腫瘍を形成した。PDGFβ型受容体阻害剤を投与し、腫瘍の増殖能に及ぼす影響を検討したところ、腫瘍の増殖が阻害され、TUNEL法によりアポトーシスが誘導されていることが確認された。ヒトDFSP腫瘍の発生、増殖においてPDGFBによるautocrine PDGFβ型受容体の活性化が関与している可能性が示唆された。PDGFβ型受容体の特異的阻害剤であるSTI-571は、生物毒性なども少なく、現在CMLなどの白血病治療薬となっており、今後ヒトDFSP腫瘍の薬物的治療として有用である可能性が示唆される。
|