研究概要 |
天疱瘡抗体がdesmoglein3に結合した後どのような機序で細胞間接着障害、すなわち水疱に至るかという問題に関してこれまでにdesmoglein3分子が半desmosome状態で存在し、desmosome形成過程でその半desmosomeが互いに向かい合って会合しdesmosomeを形成することを時間差ラベル免疫電子顕微鏡で証明している。さらに、この過程で天疱瘡抗体のdesmoglein3との結合がdesmoglein3の集合と細胞内への内包化(endosome)を惹起し、そのリン酸化と相まってdesmoglein3欠損desmosomeの形成することを示した(Sato, Aoyama, Kitajima, Lab Invest 80 : 1-10, 2000)。本年度はこれを基本に天疱瘡抗体はdesmosomeに存在するdesmoglein3に結合しても、棘融解を惹起しないし、またその結合能を直接的に阻害しないということを証明した(第26回日本研究皮膚科学会、愛媛、2001年9月7-8日)。 以上、我々のこれまでの研究成果は、抗体結合後、水疱を形成するメカニズムに新しい視点を開き、さらに展開されつつある。とくに今後は、包埋後免疫電子顕微鏡を用いて天疱瘡抗体を作用させた後のdesmoglein3の微細局在の経時的変化の検討を、desmosome構成分子であるdesmoglein1, 2, desmoplakin1, 2, plakoglobin, desmocollin1, 2, 3の分子機能と集合分散機序およびその細胞骨格との制御シグナル伝達が重要であると推察した。これから、今後も水疱症をモデルとした我々の分子病態細胞生物学的研究が妥当であることが認められ、さらに本研究を発展させ、その診断と治療の論理的開発を目指したい。
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