本研究では遺伝子のメチル化を解析する方浅としてSingle Base Extension法(以下SBE法と略)を用いようと考えていたが、大学の共同利用施設でSBE法が可能な機器であるABI社310 Genetic Analyzerは利用者が多く、多検体処理できる状況ではなかった。このため共同利用施設にあるマルチキャピラリーDNA SequencerのBeckman社CEQ2000XLを用い、重亜硫酸ナトリウム処理後のダイレクトシーケンスをハイスループットに行うことによりSBE法の代用としようと考えた。 しかしながらBeckman社のマニュアルどおりに実験を行うと、問題が生じたため改良が必要であった。まずコストが高い問題があったため、シーケンス反応液量を10μlと半分にしコスト削減を計った。反応液量減少に伴うシグナルの減少を補うため、Primer量、反応サイクル数を増加するとともに伸長時間をサイクルごとに延長した。その結果、マニュアルどおりの反応と変おらないほどのシグナルが得られるようになった。次にシーケンス反応後の精製をBeckman社推奨の方法である96well plateを用いたエタノール沈殿で行うと、シーケンス産物の殆どが失われてしまう問題があった。理由はBeckman社以外の遠心機(当講座はクボタの遠心機を使用)で生じるgの偏りであるためエタノール沈殿法による精製はあきらめざるをえなかった。代替法としてカラム精製を行ったが、当初はシグナルが低かった。そこでカラムの膨潤を充分におこなうこと、シーケンス産物を加える前にMQ水で念入りに洗うこと、遠心機に入れる向きを頻繁に変えることなどに気をつけてカラム精製法を改良、シグナルを強め正確な塩基配列決定を可能にした。ハイスループットのダイレクトシーケンス法を確立できたため、来年度はこの方法を用い老化皮膚におけるメチル化の測定を行いたい。
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